20話
−冷たい黙示録W−
「いったい何なんですか!こんなモノ見せて!!」
ネオンは未だ怖ろしさに耐え切れない心臓を押さえながら、そのモノの元凶である黒石の縁の付いた何かをネオンの目の前に置いた本人を、信じられないといった顔つきで睨んだ。
「・・・知らないのか。」
黒い男は抑揚のない声で、しかし不機嫌そうな顔つきは変わらずそう言った。
「あんな化け物みたいなの知るわけないっ!
あぁっ!!思い出すだけでもゾッとする。」
「・・・。」
男はネオンの言葉を聞くと、ゾッとするほど冷たい表情でネオンを見ていた。その表情はただひたすらに冷たく、黒い瞳は、どこまでも続く終わりのない暗いトンネルのようで、目の前にいるネオンでさえ映っていないのではないだろうかという思いを抱かせた。
ネオンは冷たい視線に居心地の悪さと、只ならぬ物を感じ、何も言うことができずにいた。しかし、そんな視線を向けられる理由も分からないのではしょうがないし、理不尽ではないかという思いが後から後から湧いてきた。
そこで、何か言ってやろうと勇気を出して口を開きかけたネオンだったが、コトコトという物音がしたために開きかけた口を閉ざした。そして、物音のした方へと視線を向けると、先ほどの黒石の縁の付いた何かを興味深々といった様子で匂いを嗅いでいる黒い子猫がいた。
ネオンはその子猫の方へ向かい、子猫のすぐ後ろに腰を下ろした。
「ほらっ、おいで」
そう言って子猫に笑みを向けたネオンは、一瞬にして固まった。
ネオンの目の前にあるのは、先ほどの怖ろしいモノが中にある黒石の縁のある何か。そして、その中には先ほどとは違うものも映っていた。
それは、黒く愛らしい子猫。
その怖ろしいモノが子猫のすぐ後ろに腰を下ろし、子猫に向かって手を差し伸べている様子が映っていた。ネオンはこの光景を見て、またヒュッと短く息を止めた。
そう、“怖ろしいモノが中にある黒石の縁のある何か”とは
実は、“ネオンの姿が映っている黒石の縁のある鏡 ”だったのだ。