18話
−冷たい黙示録U−
「もぉ、終わればいい・・・」
ネオンの悲しみに満ちた声が静かに響いた。
その瞬間、ネオンの視界を青い光が遮った。ポワッと光るその光は一瞬のうちに数を増し、ネオンの体を包み込んだ。ネオンは何が起こっているのか全く理解できずに、ギュッと目を瞑った。
恐る恐る目を開けると、ネオンの視界は一面さっきの青い光で埋め尽くされていた。眩しいかとも思ったが、その青は優しい青で普通に目を開けていることができた。
透き通るような青、
海の底のような暗く深い青、
キラキラと輝く青、
生命力溢れる深緑の力強さを持った青、
今にも消えてしまいそうなくらい儚げな青、
瑞々しく軟らかい緑の葉の混ざったような青、
優しい白い絵の具を織り交ぜたような青、
暗闇を静かに照らす青月のような青。
この世の色んな“青”を集めたようなその光景は美しかった。いつまでもこの世界の中にいたい、ぼんやりした感覚の中でネオンはそう思ったのだろう。そんな表情をしていた。
しばらくすると、その青い光たちは一つ、また一つとネオンから離れていった。ネオンはその光たちに側にいて欲しい、そう思いながらも名残惜しそうに見送る事しかできなかった。
そしてネオンの視界が再び戻ってきた時、いつの間にか座り込んでいたネオンの目の前には黒い革靴があった。村人の誰かかとも思ったが、月村の住人がこんなに上等そうな革靴を持っているわけがないと、ゆっくりと上を見上げた。
そこには一人の男が立っていた。黒い髪に、黒い瞳、黒い服、黒いマントと、全身に黒を身にまとっている。黒い髪は少し長めで軽く後ろに流している。さながらおとぎ話に出てくるヴァンパイアとでも言ったような井出達だ。
―こ、コワッ!―
ネオンがそう思うのも無理もない。その男は眉間に深いシワを刻み、こちらをいかにも不機嫌そうな顔をして見下ろしているのだ。長身のせいで、余計に迫力を増している。
その不機嫌極まりないといったオーラを放つ男はしばらくの間ネオンを睨み付けていた。一分に一本ずつ眉間のシワが増えていく仕組みなのではないかと思うほどに不機嫌だ。
ネオンはこんな状況でさえなければ、一目散に回れ右をして離れるのにという思いでその奇妙な格好の男の目を見れずにいた。
「・・・お前は・・・。」
そう言う男は未だ表情を崩さず、感情の読み取れない声色でそう言った。