KURONEKO'S room

いらっしゃいませ。

ここはクロネコの小説です☆

14話

 
知っているけど知らないU

♪・・♪・

  ♪・・・♪ポタッ・・・?!

 

 

ネオンの白い頬を一筋の雫が伝った。透明なその雫はネオンの緑がかった瞳からあふれ出し、スッと頬から顎へと駆け下りていった。

 

ネオンはそれが自分の流している涙だと気付いたと同時に驚きに目を丸くしたが、流れるソレもそのままに、静かに後ずさりし、黒い扉を押し開け外へ出た。

 

パタリ

 

嫌に耳に響くドクドクと血が体内を駆け巡る音、心臓が絶え間なく駆け足を続ける音、視界を妨げていく雫。そして込み上げてきた、ある思い。

 

 

ネオンはそれらを振り払うかのように何もない暗闇へと向かって走り出した。

 

 

 

そして、どのくらい走ったのか夢中になっていて気が付かなかったが、いつの間にかただの暗闇はネオンの見知った景色へと変わっていたのだった。

 

  ハァハァハァ

 

落ち着こうにも、止めようにも一向に言うことの利かない息切れがネオンの体を支配していた。もう空気を吸い込みたくないという思いに駆られるほどの息切れに、遂にはゴホゴホとむせ込んでしまった。そして、目に涙を浮かべながらも、ようやく落ち着いてきた息を整えた。

とたんに、思わぬ懐かしい香りがネオンの鼻をくすぐるように通り抜けた。

 

―帰ってきた?!―

 

お日さまのポカポカとした暖かさをいっぱいに吸収したような緑の香り、それに混じるように優しく甘い花の、蜜の香りがした。

 

 辺りは暗く、静まり返っているその様子は今が夜であることを物語ってはいたが、夜でも変わらないその懐かしい優しい香りはネオンが月村に帰ってこられた事をネオンに早く教えてくれようとしているようだった。落ち着いて、もう大丈夫、帰ってきたんだよ、おかえり。そう言ってくれているように感じた。

 

 絶望的な恐怖からようやく開放されたネオンは、月村の香りに癒されながら、みんなの様子を確かめるのが先決だと疲れきって重くなった体を持ち上げた。

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