KURONEKO'S room

いらっしゃいませ。

ここはクロネコの小説です☆

13話

 
―知っているけど知らない―


その時ネオンは今まで体験したことのない程の混乱の中にいた。目の前にはロドルス・グレーズと名乗る、得体の知れない危険な男。そして、この場所にネオンが来た時からすでに隣にいたゴースト。

 

―どうにかして逃げなくちゃ―

 

幼い子供には酷と言うべき混乱の中で、ネオンは考えた結果、いくら考えても分からないのならば、とにかく逃げなくてはならないと思ったのだ。

 

「それで!な、何か私に用でも?」

 

必死に絞り出した声だとは悟られないように、ネオンはできる限り声を張った。

 

 

「・・・ほぉ。では・・・私は先ほど言ったとおり退屈しているのだよMs.グロリス。ただそこにぼんやり立っていられても目障りで仕方がない。」

 

低く静かなのによく響く、独特の声が響いた。

 

「・・・そこで、Ms.グロリス、私を楽しませてもらおう。

     

    できないのならば隣のそ奴のようにして差し上げよう。」

 

不敵な笑みを浮かべているであろう、その声色は難題を出してきた。極端に例えるならば、ヒートアップした激しい言い争いでお互いにらみ合った緊迫した空気の中で、いきなり気分を切り替えてお祭り騒ぎをしようぜ!という突拍子もない提案を持ちかけられたような感じだ。

 実際、そんな中で完璧に気分を切り替えてお祭り騒ぎなど、とてもじゃないができない。

 しかし、ネオンは良いアイディアが浮かんだようで、心を落ち着かせようとしながら何度も何度もこれから言う事を反復した。

 

「ピアノ。あなたはピアノがすごく上手ですね。

 さっき、そのピアノの音色に誘われて来たんです。

さっきの曲をもう一度弾いてはもらえませんか?」

 

男は、反対にネオンから突拍子もないリクエストを受けるとは思いもしなかったのだろう。一呼吸ほど間が開き、言った。

 

「・・・まぁ、良いだろう。」

 

先ほど聴こえてきた曲が奏でられ始めた。

 

その旋律には人のココロを揺さぶるような不思議と力強いパワーがあった。美しいグランドピアノから奏でられるその音色は、吐息のように低く甘かった。

 ネオンは自分が完全にこの音色に取り込まれていっている事に気付かずにはいられなかった。小さくなった音色は、その繊細さを露わにし、そして徐々に、また徐々に大きく力強さを増していく音色はゾワリと鳥肌の立つほどの迫力を表現していた。

 

 

♪・・♪・

  ♪・・・♪・・・?!?!

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