KURONEKO'S room

いらっしゃいませ。

ここはクロネコの小説です☆

12話

 

−消えかけ(V)−




何はともあれ、ここで論点を置くべきなのはマークさんの言った

“透き通った体をした女のゴースト”だ。ネオンはそれまでゴーストとは実体のある死んだ生き物だと思っていたものだから、マークさんの話には一種のカルチャーショックを受けた。それ故にこんなにも鮮明に覚えているのだ。

 

 そして、そういった経緯からネオンは今目の前にいる“消えかけ”の男をゴーストだと思ったのだった。

 

―とにかく逃げよう!―

 

そう思って再度目の前のゴーストを視野に入れた時、それまでこちらには少しも気が付かなかったはずのゴーストと一瞬だけ目が合った気がした。しかし、驚いたネオンが目を見開いた時にはもうゴーストはさっきまでと何ら変わらない様子で一点を見つめていた。

 

 驚いたものの自分の気のせいかと思ったネオンだったが、怖くてあまり見たくないと思っていたそのゴーストをまじまじと再度見なければならないはめになってしまった。

 その“消えかけ”の男は20代前半くらいで中肉中背、前髪だけに柔らかなウェーブがかかっており、瞳は明るいブラウンで、両耳には毒毒しい色をした奇妙なピアスをしていた。顔には脂汗が浮かんでおり、やはり口はだらしなく開いたままだ。

 

ずっとそんな様子のゴーストを見ていたせいか、緊迫した空気の中にいるせいか、気分の悪くなってきたネオンは体力のある内にと、再度逃げる決心を固めていた。

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